第36話 「名誉テント」(平成23年11月29日) |
備品倉庫の中にひときわ古い救命具があった。それは戦時中か戦後にどこかで使用されたものか国防色(昔はカーキ色をこう呼んだ)の厚い布でできていた。形は大きめの円筒形のお茶の缶を2つ横にして胸と背中をはさむように固定して使うものだった。浮力を出す材料は不明で昭和62年の木曽郡のカブ隊の夏期舎営のプログラムに使ったあと、いつの間にか消えていた。
同じように古い班用A型テントがあった。日本ジャンボリーや県大会で地区ごとに並べて設営するとスカウトが言った「貫禄があるが古すぎる!」発団以来だからどうみても20年は経っていた。「新しいテントを買おう!」団と相談して、とりあえず1張りだけ買った。その新しいテントは「名誉テント」と命名した。前回の隊キャンプで優秀班になった班にその使用権が与えられたのが理由だった。
始めスカウトたちは喜んだが、そのうち複雑な表情をするようになった。優秀班の名誉は嬉しいが新しいテントには問題があった。理由は新しいテントの入口が船の船首のように突き出た前室があり、側溝を掘らなくても水が浸入しないような見慣れない箱型のグランドシート製だった。おまけに軽量化を図るためか支柱パイプは何となく弱く頼りなかった。なじみのない「名誉テント」はあまり使われなくなった。
そしてさらに10年、名古屋67団は平成22年(2011)発団40周年を記念して新しくA型テントが装備された。ある晴れた日、BS隊全員で芝生のグランドで「テントの張り初め」をした。組み立ててみると、その形は舟形グランドシートをさらに進化した、あの「名誉テント」だった。
これが名古屋67団に伝わる「名誉テント」の話です。
|
|